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はじまり
これは剣と魔法の世界での物語。
***
「何だ? これ?」
その日、光の召喚士は親友である蒼き剣士の付き添いで、とある神代の遺跡を調べていた。
遺跡の片隅に鈍色の光を見つけた召喚士は、少し警戒しながらもそれを拾い上げる。
冷たい金属の感触がある。
「銀の? 心臓?」
そうだ。
その形はまさに人の心臓のそれだ。
「どうした?」
同行する蒼き剣士が言う。
「いや、変なもの拾った」
「変なもの? 何だ?」
「うん。銀の心臓みたいな……」
その時である。
突如、遺跡の壁を震わせて魔物の咆哮が轟く。
「くッ、魔物だ。来るぞッ」
蒼き剣士は俊敏だ。
見れば、すでに剣を構えている。
正面の闇に赤い光が点々と浮かび上がる。
「うわっ、ちょっ、ちょっッ」
光の召喚士も慌てて剣を構える。
慌てた拍子に、彼は銀色の心臓を腰の袋に投げ込んだのだが……、
ふと、銀で出来ているはずの心臓が脈打ったのを、彼は知らない。
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