サロメ

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二度と音を奏でぬ唇は 深海に眠る神秘で彩られ 微かに開き魅惑する貝の如く 真珠に似た歯を覗かせる!! ヨカナーンよ 私の頽れた太陽よ 死して尚 私の心を照らす太陽よ お前の滴る雫は なんと甘美な事か!!! 銀の皿に広がる血は まるで紅玉の輝き 馨しい芳香は 蜜に呼ばれる蝶の様に 私を惹き付ける 滴り落ちる血潮は 極上のワインより甘く甘く 私の喉を滑り落ち潤す 果てぬ楽園へ続く 甘美な雫 嗚呼、ヨカナーンよ この手に お前を抱ける 最上の喜びよ 嗚呼、サロメ お前の その手に抱かれる 至高の喜びよ 嗚呼、ヨカナーンよ 私の頽れた太陽よ 明ける事を知らぬ空になった私は お前の血潮に触れ 人の身を辞めて 永劫、渇きに苦しもう 永劫、お前だけを愛そう 嗚呼、サロメ 夜を宿した私の愛しい人よ 明ける事を忘れた 憐れで 何よりも美しく浅ましく 人の身を辞め 血を糧とする その身を 私の血潮で 永劫、癒そう 永劫、お前だけを愛し 永劫、お前を離さぬ呪いを掛けよう 嗚呼、ヨカナーンよ 嗚呼、サロメよ 死して尚、この身を縛り 揺るぎなく至高と成り 夜を往く者よ 果てぬ愛を お前に
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