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めんどくさいなぁ…
小さく溜め息を吐く。
「おい!」
(え?)
私のこと呼んでる?
室内を振り返る。
と、すっかり人気がなくなった教室の前から3番目、私の席の隣で日直日誌を書いている香取くんの姿だけがあった。
「あ、の…私のこと、呼んだ?」
「他に誰がいんの?」
香取くんはノートから顔も上げずに言った。
(あ、やっぱり呼ばれたんだよ、ね?)
「何やってんの?」
「あ…昼休み野々村先生のとこ行ったらこれ貼っとくように言われて…」
「…降りろよ」
「え…?」
「早く降りて」
香取くんは相変わらずノートに視線を落としたまま言った。
「あの…」
「どうせ届かないんでしょ?」
「あぁ、うん…」
私は落ちないように慎重に教卓から机へ、それから上靴の上へと降りた。
ようやく香取くんがノートから眼を離し立ち上がる。
香取くんは私の横をすっと通り抜けるとさっさと上靴を脱いで身軽に机に上がる。そして楽々と一期一会をテープで貼り付けた。
(さすが…やっぱ背高いといいなぁ)
なんて見上げてるうちにまた香取くんはさっさと降りて、机を片付けてしまう。
「あ…ありがとう」
香取くんが私の方に眼を向けた。
「何で言わないの?」
「へっ!?」
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