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まさか何か問い掛けられるとも思っていなくてすっとんきょうな声が出た。
「日直の仕事でしょ?何で俺に言わないの?」
「ご…ごめんなさい」
そりゃそうですよね。私が苦心惨憺するより香取くんにやってもらった方が早いよね。
「野々村も他人に一期一会とか言うより、まず自分が適材適所って言葉覚えた方がいい」
(確かに…)
香取くんは立ったまま日誌の残り数行を書いてしまうとノートを取り上げる。
「あ、私持ってくよ!」
「いいよ別に」
教室から出ていこうとする彼を追い掛ける。
「あの…ありがとう」
「別にいいよ」
長い脚でどんどん進む香取くんを小走りになって追い掛ける。
追い掛けながらちらっと顔を見上げる。
長い睫毛、通った鼻筋、形のよい唇。非の打ち所のない端整な横顔。
(ホント綺麗だなぁ)
その綺麗な横顔が言う。
「あのさ、今度から高いとこ上る時はジャージ穿いた方がいいよ」
「えっ!?」
私は立ち止まってあわててお尻を押さえた。
(みっ!見られちゃった??)
教卓の上でバランス崩した時だ…私のバカ…
「別に見たくて見たわけじゃない」
香取くんは私を置いてどんどん先に進みながら興味なさげに言う。
(そっ!そりゃそうなんですけどっ!)
…あ、でも待って?
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