隣の予想外男子

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なんて、胸が高鳴る。  けど… (いやいや!それより香取くんにおなかの音聞かれちゃったしっ!しかも普段笑わない人に笑われちゃったしっ!) 「…はぁぁ」  自己嫌悪に溜め息が漏れた。         *  翌日。 (次、2時間目は国語…と)  今日はちゃんと教科書を持ってきた。  もう忘れ物はしないんだ!あんな恥ずかしい思い、2度としたくない!  キーンコーンカーンコーン…  授業が始まり、机に堂々と教科書を広げる。  私の机の上にしっかり鎮座する教科書に香取くんがちらりと目線をよこす。 「あっ、昨日はありがとう!今日はちゃんと持ってきたから大丈…」  言い掛けた時、香取くんが自分の教科書をずいと私の方へ押しやった。 「あ、あの、今日は持ってきたから…」 「引いてないだろ」 「え…?」 「教科書に線」 「あ…」  香取くんはそれだけ言うと頬杖を突いて黒板の方に向き直る。 「あの…ありがとう」  私は香取くんの教科書を真似て自分のそれに線を引いていく。 (無愛想で他人に興味ないみたいに見えて、意外と人のことよく気付くんだな…)  教室に舞い込む風は夏のはじまりを予感するお日様の薫り。  私はちょっとほっこりした気持ちで、香取くんに感謝した。     
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