放課後の剣術男子

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 その時ギャラリーの中からひそひそと声が聞こえた。 「香取、やるなぁ」 (え…?)  まさか、あの青年剣士が…香取くん…?  一本も落とすことなく4人に勝ち抜き、今はまさに大将にも勝とうというこの人が香取くん…? 「知世、あの人…」 「あれはね 香取くんだよ」 「二本目っ!!」 「やぁぁぁぁっ!」 (あぁ、やっぱり香取くんなんだ…)  香取くんが中段に構える。背筋も腕もぴしりと伸びて、背の高い香取くんが何時にも増して大きく見える。 「キェアァァァァ!!」  大将の気合いみなぎる声。 (香取くん、頑張って…)  私は思わず胸の前で両手を握り締める。  間合いを見極めながら二人、じりじりと動く。そこにはお互い一分の隙もない。 「とーぉぉぉう!」  打ちかかる香取くんの竹刀を大将のそれが受け止める。  パァーン、パン、パンッ!!  ダンダンッと床を踏む音。叫ぶような掛け声。 (香取くん!)  それをただ固唾を飲んで見守るしか出来ない私。  しばらく拮抗していた中、不意に香取くんが動いた。 「面ーーーッ!!」  切っ先が美しい弧を描き、振り下ろされる。  一瞬、その場にいた皆が息を飲んだ。  スローモーションみたいに彼の竹刀が大将の面を打つ。  パァァァーーーン!!  刹那の間。そして─     
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