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「面あり!勝負あり!!」
(勝った…!)
綺麗な所作で竹刀を収め、礼をすると、試合場の脇に正座して小手と面を外す。
面の影で頭に被った手拭いを外す瞬間前髪がふわりと落ち、香取くんは軽く頭を振る。振り散らされた汗の雫がきらりと舞う。
(え…ちょ…)
色っぽい…
なんてふと思ってしまった瞬間、
(……!!)
香取くんと眼が合った。
ほんの一瞬。
(やだ、ちょっと…)
ホントにカッコいい…
なんて、時が止まってしまったのは私だけで…
香取くんは床に手を付き一礼するとさくさくと防具を外して立ち上がり、剣道部の面々に向かって言い放つ。
「じゃ俺が勝ったんで、約束通り剣道部には入りませんから」
そして香取くんは入り口でもう一度礼をして更衣室に引き揚げていった。
「く~~っ!あれだけの逸材逃がすのは惜しいよ!マジで!!」
残された大将が頭を掻きむしって口惜しそうに言った。
「何だったの今の?」
他の観客たちと一緒に引き揚げながら知世に訊ねる。
「なんか剣道部が香取くんを勧誘に行ったんだけど断られてさ、それでも諦めきれなくて何度も行ったらついに香取くんが根負けして『俺と勝負してそっちが勝ったらいいですよ』なんて話になったんだって」
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