放課後の剣術男子

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「じゃ瑠璃、また明日ね~」 「またね、知世」  黄昏の空に濃鼠色の巻雲がたなびく、梅雨の合間の帰り道。  天気を信じて自転車で登校した私は、雨が降りそうだからとバスで来た知世とバス停で別れると、自転車に跨がった。  空はまた今夜から雨になるかな?怪しい雲が夕空に蠢く。 (でもまだ大丈夫そう)  昨日も一昨日も自転車で来れなかったもの。今日は少し遠回りして川沿いの遊歩道を通って帰ろうかな。  いつもと違う角を曲がり、この町の中央を雄大に流れる大河へと向けて自転車を走らせる。  堤防の土手に上がると夏の初めの瑞々しい風が広い川の上を吹き渡ってくる。昨夜までの雨で川は滔々と水を湛え、ゆったりと穏やかに流れていた。  広い河川敷のグラウンドでは少年野球の子供たちが掛け声を上げて練習に励んでいる。  雲間から零れる夕陽にきらきらと煌めく川面を見ながら、私は遊歩道を駆けた。 (風、気持ちいい…)  コリーのような大型犬を散歩する飼い主さん、それから連なって走る2台のロードバイクとすれ違う。   風を切って走りながら土手の草葉の草いきれが薫る空気をすうっと吸い込む。  とその時、 (あ…)  鼻先にぽつりと冷たいものを感じた。     
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