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最初は気のせいのようだったけれど、次第に手の甲、それから頬と小さく濡れるのを感じる。
(うゎ、降ってきた!)
ペダルを踏み込む足に力が入る。
(あ…)
降り始めたのにまだ河川敷で何かやってる人がいる…
ぐんぐんペダルを漕ぎながらも、ふと気になってそちらを見遣る。
野球ではなさそうだな。
7、8人かそのくらい。
グレーの制服。隣町の商業高校かな?
グレーの集団の中に、紛れるように藍色のズボンの後ろ姿が見えた。
(うちの学校の制服…?)
その時混沌とした集団の中で何かが遠い夕陽を受けて鈍く光った。
(えっ…!?)
それは振り上げられた金属製の棒で、その先には藍色のズボンの男の子がいた。
(ひゃあぁっ!?)
気付くとグレーの男たちの手には皆一様にそんなものが握られている。
(いじめ!?ケンカ!?えっ!えぇぇっ!どうしよう!?)
河原でケンカなんてママの時代みたいなことがホントにあるなんて!?
私は急ブレーキで自転車を止めた。
「おらぁ!」
「かかってきてみろよ!このチキンがぁっ!」
間一髪振り下ろされた金属棒を男の子は手にした長い枝のようなもので防ぐ。
次々と襲いかかる男たちを枝でいなすけれど、それ以上彼は応戦しようとはしない。その上、多勢に無勢で断然分が悪い。
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