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プロローグ
「なぜ……、君は世界を壊すの?」
空は夕陽広がる茜色。
風に揺られる赤い髪は焦がすような強い光で輝いている。
──彼女は振り向いて微笑むが、言葉はない。
世界は彼女の突き出した右手を中心として風に包まれ、草木は騒ぎ、地は唸る。
問いかけた少年の視界には、彼女の前を羽ばたく蝶が映った。
鮮やかな赤く染まる羽を大きく広げて、空気を掴んで舞うその姿は強い存在感を放っているが、不思議なことがあることに気づいただろうか。
風が高い声を上げて荒れる世界を、ましてや蝶が飛ぶことなんてできやしない。しかし、その真っ赤な蝶はまるで豊かな花畑を舞うかのように物ともせず飛んでいる。
頻繁に方向を変え飛ぶ蝶がやがて彼女の右手に触れると、右手の光は静かに四方八方に広がり始めた。
そして世界は、光に染まった──。
なぜ少年と少女前にあの蝶が現れたのかは、誰にもわからない。
魔法。
現代社会ではあり得ない現象、人間の次元を越えた力を実現する能力である。
そんな魔法は、まだ謎に包まれている部分が多くあり、誰もが持っているものではない。
世界は過去にあった魔法の世界戦争によって日本以外すべて滅びてしまった。
原因は魔法戦争時代、日本に最強と恐れられた魔法の使い手が現れ、日本以外をたったの一瞬で滅ぼしてしまった。
この世界では、生まれつき魔法を持ついわゆる選ばれし天才を【能力者】と呼んでいる。
舞台は魔法戦争から100年ほどの月日が経った時代での話であり、
この物語は、能力者と魔法を持たない者たちが日本しか残っていない世界で繰り広げる戦いの記録である……。
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