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ぐったりしてる。話したくても余裕がないのか。
ったくも……だから嫌なんだよ。
俺はスピード徐々に落とし、船のエンジンを止めた。
「おい。大丈夫か? 酔い止めとか飲んで来なかったのか?」
スーツ野郎はコクコクと頷いた。
「酔い止め、……飲んできたから」
スーツ野郎からすっかり気取った余裕の雰囲気は剥がれ落ちていた。ただの頼りない男だ。
「じゃなんで、そんなグッタリしてんだよ。効いてねぇじゃねーか」
俺はスーツ野郎から上着を脱がしてクーラーボックスの上へ置いた。息苦しそうなネクタイも首から毟り取り、シャツのボタンも外す。それからスーツのズボンのベルトに手を掛けてシュッと抜いた。
身体を締め付けているから余計に辛いんだよ。
「……だい、じょぶ」
「大丈夫じゃねーから介抱してんだよ。ほら、奥に休憩するとこあっから……」
俺はスーツ野郎の腕を首に掛けて、スーツ野郎の腰に手を回した。
見た目よりももっと華奢で柔らかい体。
いったいどうなってんだ。本当にコイツ、男なのか?
操縦室の後ろにはドアが一枚あって、人が一人横になれる狭い仮眠室がある。そこへ朦朧としてるスーツ野郎をつれて行くとゆっくりと転がした。
「すみません」
「……ああ……」
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