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「……げ」
翌朝、三時半に港へ行くと、スーツ野郎が寒そうに体を竦め立っていた。眠そうにメガネを取り指先で目頭を擦ってる。でもってやっぱりスーツ着てやがる。
やっぱアホだなこいつ。
俺はスーツ野郎に気づかないフリして通り過ぎた。
「今野さん!」
スーツ野郎は嬉しそうな声で俺を呼ぶと、手をちょっと上げ駆け寄ってきた。それを無視して前日にしまっておいた冷蔵庫から魚の入った箱ををどんどん出して軽トラの荷台に積む。全部積み終えたら、次は今日の漁で使う網のチェックもしなくちゃいけない。朝はやることがいろいろあって忙しいんだ。
「おはようございます。昨日はお疲れの所すみませんでした。お手伝いしますよ」
スーツ姿で現れていったい何を手伝うつもりなんだこいつ。
「別にいいよ。スーツが汚れるから離れ……」
白い手が俺の手のひらに触れた。ギョッとして顔を上げる。スーツ野郎は上着を脱いで、袖を捲っていた。生白く細い腕がシャツからニュッと出ている。
なんでこんなに白くてツヤツヤしてんだよ。なんで腕に毛が生えてないんだよ。
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