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「……ここから一時間半程走って、ポイントへ向かうから。あんたは危ないから中で座ってな」
「いえ、お邪魔にならないように。端の方に居させてもらいます」
「……あ、そう」
もうあんたの存在自体が邪魔なんだよ。そう思ったけど、何故か喉が引っかかって言葉が出ない。
「別にいいけど……好きにすれば」
俺は船を出港させた。
しばらくスーツ野郎は俺の行動をじっと見ていたけど、よたよたと傍に寄って来た。物珍しそうに機械を眺めている。
「……今はこんな漁船にもGPSが載ってんだよ。機械に頼って漁してんの」
「GPSってこれですか」
「そ。魚影もこれで見るし、自分の船の位置も、仲間の船の位置も確認出来る」
「へぇー、面白いですね」
さも興味ありげにまじまじと見てる。
こんな小さな船、舗装のされていないデコボコ道をオープンカーで走っているようなものだ。波に船体が当たる度に船体が大きく上下に揺れる。その度にスーツ野郎は華奢な体をふらつかせた。俺はもう慣れた。船に乗った頃はよく船酔いしていたけど、いつの間にか平気になっていた。
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