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3日前。
キッチンが、隣の部屋がガチャガチャ、ゴトゴト、チリチリとうるさく、それで目が覚めた。
「んー…何事?」
その音を煩わしく思いながら目を開けてベッドから起き上がると、私は辺りを見回した。
まずはキッチンに目をやる。
「ディアー!トマトー!」
「俺はトマトじゃない……いやすまん、そんな目で見ないでくれ。はい、トマトだな」
「うんうん、ディアは黙って私の頼むことを聞いてればいいの!」
空恐ろしくも、魔王であるディアをこき使い、料理をしているルリの姿が。
扉が開いている隣の部屋を見る。
「んー…この味だと小さい子が飲めませんよね……蜂蜜でも入れてみる……?」
試行自分で作った薬を試行錯誤しながら改良しているアリーシアの姿が。
アリーシアの隣の机を使っているミズキに目をやる。
「……もうすぐ夏、だから向日葵とか、いいけど、売れますかね……他にも、調べなきゃ……」
夏に売る花を考えているミズキ。
そして、私を見る。
彼女らが頑張っている中、ひとりだけベッドの上でゴロゴロし、特に仕事もしずに自堕落な生活を送っている、彼女らの元主人格。
魔王であるディアすら自ら手伝いを引き受けているというのに、私は?
「……このままじゃダメだ!」
私は公共就業安定所――要するに、ハローワークのようなところだ――に行くしかない!
でも今日はダメだ、雨が降ってるし。
たしか明日も雨だな。
……よし、明後日行こう!
そんなダメ人間のようなことを言い続け、ようやくその日がやってきた。
私の新しい人生が始まる(かもしれない)日を迎えることとなったのだ。
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