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このままでは死ぬだろうと思われた時、突然悠人の体が淡く光り始める。
神から勇者だけに与えられたスキル、生きてさえいればどんな怪我でも治る「神の息吹」が発動したのだ。
そのおかげで悠人の傷は治ったのだが、体がピクリとも動かなかった。
時間にしてわずか数分前とはいえ、信じていた仲間に殺されるところだったのだ。
「やはり、死にませんでしたか…」
その声に悠人はゆっくりと、虚ろな目でシュバルツを見上げた。シュバルツは、悠人を嘲るように見下し、笑っていた。
「しょうがないですね…皆さん。この“化け物”を…」
シュバルツの言葉に頷く二人。三人は淡々と呪文を唱え始めた。
「レギ・ジオ・フラン」
アルティーナは炎の王級魔法を、悠人を囲むように展開させ。
「ギオ・ナノ・フール」
レギオンは風の上級魔法を剣に纏わせ。
「ハジ・エン・ザード」
シュバルツは水の王級魔法をいくつもの弾丸のように宙に浮かせて。
三人の攻撃が、悠人の息の根を止めようと襲い掛かる。
どっごぉぉん…
激しい音を立ててあたりが土煙に包まれた。
しばらくすると煙が晴れ、悠人のいた場所が露わになる。
そこは巨大なクレーターのようになっており、悠人のものだと思われる大量の血があたりに飛び散っていた。
「…死んだかしら?」
アルティーナが感情を感じさせない声で問いかける。
「いくらあいつが…といえど、死んだだろう」
レギオンが面倒くさそうに頭を掻きながらそう言った。
「そう…」
クレーターができている場所を静かな目で見つめるアルティーナ。
その横顔を照らすように暗い夜が終わり、静かな朝が来た。
・ギルネス王国北、魔王領。暗黒の森。
不気味な森の奥深くにある暗い洞窟の奥。
悠人は満身創痍でありながらも、かろうじて生きていた。
洞窟の中は薄暗く、はっきりとは姿は見えないが、目がギラギラと濁り、鋭く光っている。
「…許さない。絶対に許さない!あいつら…!!簡単に、死なせるものか…!!たとえ何年かかったとしても全員…絶対に殺してやる!!!」
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