第一章、転生

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・現代日本、夏。午前。住宅街。 男子高校生、篠宮優希(しのみやゆうき)は走っていた。 朝、目覚まし時計が鳴っていたのに気づかず、盛大に寝坊してしまったのだ。 (やばい!やばいっ!!今日は朝からゴリ男の授業なのに!) ゴリ男とは、優希が通う高校の体育教師である。本名は忘れたが、全体的にゴリラに似ていることから、影で生徒たちにそう呼ばれている。ゴリ男は今時珍しい熱血教師で、遅刻したり忘れ物をしたりすると、罰として校庭を走らされる。それも授業が終わるまで、だ。 (朝からそんなの、絶対嫌だ!) 走るスピードを上げる。それがいけなかった。 信号が無く、あまり車が走ってない横断歩道を渡ろうとした時、キキィーーーーーッ!と横から車が迫ってきたのだ。ドンッ、という音とともに体が宙に浮き数秒たった後、優希の体が地面に勢いよく叩きつけられた。 …意識が朦朧とする。頭を強く打ったみたいだ。体が、動かない。 優希の目の前には、自分が流しているであろう血が視界に大量に映っていた。 (俺…死ぬのか?) 周りに人が集まってきていた。 「おい君!大丈夫か!?」 誰かに声をかけられるが、口が動かせない。 じわじわと、体の感覚がなくなってきた。 (ああ、俺…死ぬんだ…な……) そして優希の目はゆっくりと閉じられ、二度と目を覚ますことはなかった。 ・ギルネス王国辺境、西。アヴァン領。夏、朝。 この日、アヴァン領の領主館にて、一人の赤子が生まれた。名を、ウィリアム・アヴァン。 後に、「希望の勇者」と呼ばれる男の誕生である。
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