第二章、現状と悪意の種

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・5年後、ギルネス王国辺境。アヴァン領、領主館。 「きゃああぁぁぁぁぁあああああぁあああああーーー!!!!」 朝早く、一人のメイドの悲鳴が領主館に響き渡った。 メイド長のメアリは呆れた顔で、自室のドアを開けて声の聞こえた方を覗いた。 「何事です、朝から騒々し…なっ!?」 メアリの視線の先には、全身泥まみれなウィルが立っていた。 「ぼっちゃま!?どうなさったのですかその格好は!!!」 「えっとね、癒しの森に行ってきたんだ!そこにね、で?っかいドラゴンがいてね、一緒に遊んできたんだよ!楽しかった?♪」 癒しの森とは、アヴァン領の東にある精霊が住むと言われている森だ。弱い魔物がたくさんおり、たまに強い魔物が出現するという場所だ。 その言葉を聞いた途端、メアリは顔が真っ青になった。ドラゴンといえば衝動的に暴れまわり、人間を食らう凶暴な魔物だ。メアリは慌ててウィルの両肩を掴んだ。 「お怪我は!?」 メアリの迫力に少し引きつつ、 「大丈夫だよ。この通り!」 両手を勢い良く回す。その様子に先ほどのドラゴンのことは冗談だったのかとホッとしたメアリは、次の瞬間キッ!と眉間にしわを寄せウィルに怒鳴った。 「いいですか!?人を心配させるような嘘はついてはいけません!もう、二度と!このようなことはなさらないでください!嘘でもぼっちゃまに何かあったらと思うとメアリは、メアリはーっ!!」 泣き始めたメアリからゆっくりと離れ、背を向けて走り出した。 (メアリごめん!俺、長いお説教は嫌いなんだ!) メアリはウィルがいなくなったことに気づかず、話を延々と続けていた。
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