第二章、現状と悪意の種

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・アヴァン領、母の部屋。 「かあさま!おはようございます」 ウィルはベッドの上に座っている儚げで優しそうな雰囲気を持った母に挨拶をした。 「おはよう、ウィル」 母が手招きする。近づくと腕に抱えられ、膝の上に乗せられた。 「かっ、かあさま!?」 「んー?なあに?」 恥ずかしかったが、嬉しそうにニコニコと笑う母に逆らえない。 「なんでもない…です」 視線を泳がせた先、ウィルはベッドの上に置いてあった絵本に気づいた。 「これは…?」 母は絵本に目をやると、 「それはね、この世界を救ってくださった、勇者さまの物語なのよ」 「勇者さま…?」 「そうよ」 母は絵本を手に取り、読み始めた。 「ある日突然、この世界に魔王が現れて、町や村を襲い始めました。そして世界は真っ暗な闇に覆われ、人々は絶望に打ちひしがれました。だが突如、金色の光が空を覆い、天から勇者さまが現れました。勇者さまは仲間とともに、魔王を倒しに旅立ちます。立ち塞がる敵を倒し、数多の罠をくぐり抜け、ついに魔王城へと着きました。勇者さまは魔王を倒し、世界に平和が訪れました。勇者様は魔王を倒した後、役目は終えたと天に帰ってしまいました。ですが、今でも勇者さまの仲間であった英雄たちは、この国を守って暮らしているのです」 「へぇ…」 絵本に書かれた勇者の絵を見る。黒髪黒目。 (もしかして…)日本人じゃ?と思うものの、まさかな?と本を閉じた。
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