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不思議と心は穏やかで、ああ、やっと見つけた、と思った。土の中に横たわる私の首には、はっきりと手で絞めたような跡が残っていた。自分の死体を見つめながら、死に顔が綺麗で良かった、と思った。私はエリの隣に並んだけれど、エリが私の存在に気付く様子はなかった。エリは、ぼうっと、立ち尽くしながら、黙って私の死体を見下ろしていた。
どのくらいの間そうしていたかはわからない。生きることを止めてしまったかのように口を閉ざしていたエリが、こぼすように口を開いた。
「わたし、ずっとずっとあなたのこと好きだったわ」
汗で前髪が額に張り付いたエリの顔を私は覗き込んだ。
「サキとずっと一緒にいられたらいいって思ってた。だからあなたから彼氏ができたって聞いて、死んじゃいそうなほど辛かった」
そうだった、私は同じクラスの男の子に告白されて、今まで誰かから告白されたことなんてなかったから、思わずオーケーしてしまったんだっけ。
「わたしたち、ずっと一緒にいたのに、サキを取られるなんて耐えられなかった」
エリは、ぽつり、ぽつり、と絞り出すような声で言った。
「だって、あなたが私を好きになることなんか、ないわ。どんなに私があなたを想っても、サキが私のことを好きになってくれることなんか、絶対にないもの」
エリの長い睫毛が揺れて、私はなんだか泣きたいような気持ちになった。だけど、もう涙が出ることはなかった。
「ねぇ、今日この場所にサキが来たことは私しか知らないわ。大丈夫、絶対に誰にも見つかるはずないわ」
勉強も運動もなんだってできちゃう癖に、本当に馬鹿なエリ。この世の中に絶対なんてことはないのに。
「これからもずっと一緒にいてね、サキ」
そう言ったエリの横顔は怖いほどに白かった。私は泥だらけになったエリの手を握ったけれど、やっぱりエリが私に気付いてくれることはなかった。
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