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通い慣れたエリの家まではひとっ飛びだった。空を飛べたらいいのに、という小さい頃からの夢がまさかこんな形で叶うなんて。まあ、もう死んでしまっているのだけれど。
しかし、エリの家は無人だった。閑静な住宅街にたたずむその家は、一際静寂を守っているように思えた。エリのご両親は忙しく海外を飛び回っているので、この大きな家で大半の時間をエリは一人で過ごしている。
エリはどこにいるのだろう。こんな時間に一人で出歩くような子ではなかったはずだ。私は生前の記憶を総動員させてエリの行きそうな場所を考えた。
不意に、頭の中に昔の記憶が蘇る。幼い頃の記憶。私たちがまだ小さい頃、よく二人で遊んでいた場所。そうだ、あの場所に行ってみよう。今の私なら、そう時間もかからないだろう。
そこは私たちが通っていた小学校の裏にあった。裏山と呼ばれるその敷地は崖のようになった場所も多く危険なため、立ち入りが禁止されていたけれど、子供たちにとっては魅力的な場所だった。大人の目を盗んで森に侵入する子供が後を絶たず、私たちも漏れなくその内の一人だった。
森はしんと静まり返っていて、虫の音すら聞こえない。まるで、木々たちも深い眠りに落ちてしまったようだ。どう考えても女の子が夜遅くに来る場所ではないはずなのに、きっとエリはそこにいる、という予感が私にはあった。
闇の中にぼんやりと白く光るものを見つけた。セーラー服からまっすぐ伸びた長い手足、綺麗な黒髪。あの華奢な後姿は、間違いない、エリだ。
おぼろげな光に見えたのは地面に転がる懐中電灯の明かりで、地面の一部は掘り返されているように見える。何かを埋めているのだろうか。私がエリに近づくにつれ、もう一つの予感は確信へと変わっていった。
エリのセーラー服が土にまみれていることに気付く頃、私はそこに眠る自分の死体を見つける。
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