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沙月の金魚
水槽の中でゆらゆらと、揺れる金魚の尾。
水を循環ろ過する装置の音と、水が落ちる音。
中のガラスの端には少し藻がついていて、そろそろまた掃除をしなきゃな……とぼんやり考える。
この中は密室で閉じ込められた金魚は、何を思い何を考えこの中を泳ぐのだろう。
泳ぐ先にガラスがあって、その先に行けないと知ったとき金魚は絶望することはないのだろうか?
見ている限りでは、そんな素振りは金魚にない。
どこかの夢物語のように、空を飛べる特別な金魚ならまた違った悩みを抱えたりするのだろうか?
とはいえ、飼っている金魚を川に流しても……自力で餌にありつけるかどうか悩ましい。
この水槽が、閉鎖空間で悲観的に思うのは、きっと私の勝手な思いで勘違いなのだろう。
水の音と光の乱反射。
直射日光に当たらないように気を付けているけれど、それはそれで淡い光加減が現像的で、時間が気にならないくらい飽きることなく金魚を見つめ続ける。
ねぇ、金魚。
私はいつここから解放されるのかしら?
あなたのように閉じ込められているわけじゃないけど、自由にならないの。
お互い、生きるというのは苦しいものね……。
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