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突如鳴り響いたけたたましいサイレンの音と、警戒を強める赤いランプの点滅が、施設の係員たちに緊急事態を知らせた。
通常業務から突然投げ出された係員たちが対応準備のために集まってくる。
「なんだなんだ!?」
「脱走だ」
「脱走!?」
この施設が出来て以来、そんな前例はまずなかった。まさに前代未聞。部屋中にざわめきが広がる。
「どこで!?」
「搬送中に輸送車ごとだそうだ」
「はあ!?担当は何やってんだよ!」
「まったくだ」
「こりゃ、減給か下手したら解雇だな」
「いや、解雇はないだろう。どうせすぐ捕まる」
そう。『どうせ』である。
「どうせクローニン一人だ。何も出来ん」
まあ、それもそうか。そこにいる誰もがそう思った。
鳴り止まぬサイレンとは裏腹に、係員達の焦りはほぼ薄れていた。
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