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「うれしい?」
「はい! 昨日の夕飯の残りを使ったり、今日の夕飯の下準備も一緒にできるので」
「あ、そう……」
「じゃあ、何を作ろうかな~」
こういう時、なんて言えばいいのだろう。
「……困った」
全然、陽気なお兄さんなんかじゃない。
ありがとう? それとも、お願いします?
彼女を眩しいと思う感情の名前を、俺は知らない。知らないけど……
「小松菜? いいですねー。おひたしも入れましょうね」
俺は腰に手をあてて、息をつく。
この瞬間が続くのは悪くないかな。夏月ちゃんが乗り気だからよしとしよう。
翌日。コンビニに立ち寄った俺は、いつものように弁当コーナー……には目もくれず、軽く埃が被った文房具のノートを手にした。
レジの店員が少しだけ不思議そうな顔をしていた気がする。よく行くコンビニだ。顔を覚えられていたのかもしれない。
「いつがいいかなー。給料日」
自動ドアを通ると同時に前髪を崩す。
明日から、どこで眞野に変わろうか。
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