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「はる~。お前はいつもお風呂入りたてみたいにあったかいなぁ」
「やーや、あいっ!」
えぇーっ。
「いてっ。そんなつれないこと言うなよー」
この嫉妬にも似た感情は、折り紙への敗北だ。
はるはエリカさんが産んだ子で、俺の子だよ。
抵抗ごとはるをベビーチェアから抱き上げ、俺はくっつけたほっぺたをうりうりとはるにすり寄せる。
次の瞬間、夏月ちゃんの身体が俺とはるの間に割り込んできた。
「わ、なになに」
はるの頭を固定して額をくっつける夏月ちゃんの髪の毛が顔に触れそうになり、身体をのけぞらせて姿勢を正す。身体をのけぞらせて、俺は目をひん剥いた。
彼女は風呂の様子を見てくると同時に、掃除もしてきたのか足元は短パン。胸元がパツン、パツンのTシャツは水飛沫が飛んでところどころ濡れていた。
エロいな!
不意打ちの攻撃に立ち上がろうとするけど、夏月ちゃんがそれを許さない。
「どーしたの。わわっ。おーよしよし、ごめんなー」
あ、頭が揺れる……
耳元ではるの泣き声をダイレクトに受け、耳がキーンと鳴る。
「……やっぱり」
「え?」
「熱がある。……私が来たことで、はるくんの生活のリズムが乱れてたのかも」
熱?
ああ、と納得。むしろ、整ったはずなんだけどね。
ようやく夏月ちゃんの身体は離れていった。
「だから、身体暑かったのか」
「ああ、って……」
高い高いをしたまま、上目遣いにはるの身体を揺すってみる。泣き止んだはるが抱っこと腕を伸ばしてきたので、ぽんぽんと背中を叩いてやれば、気分が落ち着いてきたのか指をくわえた。
って、夏月ちゃんのほうがゾンビみたいになってるけど!?
「ちょ、ちょちょ」
聞こえるか聞こえないかの声のボリュームではるを「病院に連れていかなきゃ……」と呟き、俺の声は届いていないらしい。
携帯を取りに行ったり、布団を用意するならまだよしとしよう。はるのおもちゃにつまずきそうになっている夏月ちゃんの肘をつかんだ。
「待った! これくらいの時期の熱なんて日常茶飯事でしょ。多少、熱があろうがこの通りピンピンしてるんだから、もう少し様子を見ても……。これで病院に行ってたらキリないよ!」
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