恭賀Side後編 3話:誕生日プレゼント

6/21
前へ
/152ページ
次へ
話聞いてなかったの? 「でも……!」とすがるように胸元をつかんできた夏月ちゃんへ、視線に離せよと込める。 夏月ちゃんってまんま口うるさいし、へんちくりんな方向におせっかいだし、王道すぎるくらいバレバレなんだよね。 自ら仕事を探して暇な時間を作らないように身体を動かす日々。今から俺が言う言葉に、夏月ちゃんが目を見開くことも。 「家族を失ったからって、ちょっと過剰反応しすぎじゃない?」 「過剰反応?」 夏月ちゃんの表情をうかがうと、彼女はとびきり不機嫌そうな顔をした。 「はるの父親は俺だよ? キミが俺達の何を知ってるって言うの?」 「なんともないならないに越したことないじゃないですか!」 だからさぁー。 言い返してきたことに、“煩わしい”そんな黒い感情が湧き上がる。 夏月ちゃんがゲームのヒロインのままでいてくれたら、せっかくこの生活も上手くやっていけるのかなって思ってたのに…… 水をさされたみたいで、テンションが下がる。 「パ……」 ゴクリと夏月ちゃんが唾を飲み込む。 何が情だ。俺の生活まで変える権利がどこにある。 「パパさん達の何を? そんなの、聞かないよう言ったのはパパさんじゃないっ。他に行くところがないのに、詮索なんてできません……っ。守れるものがあるだけいいじゃないっ! 私は……っ。私にはっ、何もない!! 失って後悔しても遅いんです!」 「……」 夏月ちゃんの息遣いが響く。 けれど、場の空気は凍りついているというか。 ……酔ってます? 「ええ、偉そうなこと言ってごめんなさいっ」 ハッと我に返ったのは、夏月ちゃんのほうが先だった。 家主に意見するなんて、おこがましくて…… やっと事の重大さを理解したらしいが、俺までついつい呆気に取られてしまった。 「偉そう……。いや、あ……」 俺までしどろもどろになってどーする。 『何もない!!』 まさか、そんな言葉に胸を貫かれた。図星を指され、痛いところを突かれた。 「明日になっても熱下がらなかったら病院連れてくよ。ほ、ほら、コイツのかかりつけの小児科、今日は休みだし。この時間帯だとどこも時間外で診てくれるか分かんないし……」
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加