恭賀Side後編 3話:誕生日プレゼント

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「だって、バレちゃったなら隠す必要ないじゃん。イヤホンって結構、耳痛くなるんだよ? それに、イヤホン使ってると夏月ちゃんが引っかかって壊されそうだしー」 夏月ちゃん、ちびっこいからなぁ。 抵抗することを諦め、防御に徹することにしたらしいが、耳を塞ぎ身体を縮こませているおかげで、胸を寄せている姿を存分に味わうことができる。 俺に正体がバレないよう、パジャマエプロン最高!! 一頻り夏月ちゃんをからかい倒し終える頃には(俺が)酸欠になりかけていた。 「まぁ、冗談はそれくらいにしてー。なんか今日は朝からテーブルが華やかだね。このスコーンも焼きたてだし」 ティースタンドからスコーンを手に取り、かぶりつく。 瞳が甘くなるよう心がけて目尻を下げる。頬杖をつき、ちょっと首を傾げて俺にドキドキしちゃえと込めて夏月ちゃんの瞳を覗き込んだ。 「ホント! 夏月ちゃんって真さん並みに女子力高いよね」 にっこり笑ってみせるも、若干、子供っぽさが足りなかったか? 夏月ちゃんは引き気味に棒読みで笑い返した。 今の役どころは、乙ゲーの“質問!! 恋ってなんですか?~教師編~でいう君尋クンだ。夏月ちゃんは中学の頃からクラスが一緒の妹的な幼馴染。ストーリー上の攻略対象ではないものの、巧みな話術の反面、一途なところに生じるギャップでサブキャラの中ではダントツNO.1キャラクター。特撮ヒーローヲタクで密かにアクション俳優を目指している君尋クン。苗字が不明なのがサブキャラの悲しい性だ。 ゲームの世界観は無敵だ。普段は言う機会のないセリフも、今のように役になりきれば伝えることができる。役になりきって幾通りの人生を味わえる。 “眞野恭賀”は不自由だけど、演じられる限り心は自由だ。 「夜はもっと豪華で、はるくんにも食べられる料理を作りますね!」 はるも? なんだかさっきよりも興奮してない? 「えーっと……何かイベントみたいなのあったっけ?」 俺は首を傾げる。 「え……」 夏月ちゃんは何の役を演じているのか探ってしまうくらいに盛大に顔を青白くさせて勢いよく頭を下げた。
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