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立場っつーものを分かってよ。キミは俺の“ヒロイン”でいてくれなきゃ。
あーあ。間違えたか、選択肢。
駄目出しをするように夏月ちゃんへため息をつきつつ、俺は前髪を下ろした。
はるの誕生日プレゼントを買いに来たと見せかけて(この後、実際に買うつもりだ)、俺はある喫茶店に立ち寄ろうとしていた。
店のロゴがデカデカと入ったガラスの中央の席で、頭を抱える大きな図体を目算通り見つけて、俺は軽くガラスを叩いた。
締め切りに追われているとしたらここには来ていないだろうし、おそらく次のネームを考えているだろうクマさんが目の下にクマを作った顔を睨むように上げた。
機嫌悪っ。
ドアベルをカランカラン♪と鳴らしながら店に入る。学校は違えど、同い年くらいの若者グループが数組と、休憩中と思われるサラリーマンが店内にはいた。
「俺が寝不足の時もそんな顔だった?」
「……」
対面に俺が座れば、火に油! みたいな顔をして見せたけれど、通りかかった店員に手を上げると、そのまま俺を指さした。
「なんだ」
「それは、何しに来た? ってことでいいのかな。あ、アイスコーヒー下さい」
店員は、さらりと伝票をに追加を書き足し去っていく。なかなかの綺麗な足をしていらっしゃる。
「特に理由はないよ。はるがもうすぐ誕生日でさー、プレゼントを買いがてら朝のメールも気になってたし、いるかなー? って覗いてみただけ」
「誕生日……」
クマさんの顔が心なしか柔らかくなる(そう見えた気がした)。
何か考えてるな? 俺なんかより、よっぽどはるのことを考えてくれている。
「それでさ、何をあげたらいいと思う?」
これが本来の目的だったりして。
アイスコーヒーが届くと同時に気をそらしてしまったらしく、A4程のサイズの用紙に文字がびっしり書かれた紙を片付けた。
クマさんも気分転換がてらにここに来たという設定に勝手に解釈して、俺はストローをくわえたままテーブルに肘をついた。
「自分で考えろ。俺が言ったらまんま同じ物にするだろ」
「そりゃ、代案をいただければここの代金くらいは払わせてもらうさ」
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