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「あげたらって考えてるうちは何も浮かばないだろうな。貰ってうれしい気持ちだろ」
大切なのは?
コーヒーの苦さに加え、指摘を受けた俺は露骨に口を曲げた。
「うわー、まんま夏月ちゃんが言いそう」
だったら俺は、はるが百歳になってもはるを喜ばせてやれないな。俺が貰ってうれしかった物なんてありやしないのだから。
「磯野さん?」
「あれ? ご不満?」
眞野恭賀が俺と知って距離を取った夏月ちゃんを思い出して、思わず口元が緩む。
俺も大概、大人気ないねぇ……
いちいち夏月ちゃんが感情を晒してくれるから、面白くてついからかってしまう。
「……キョン。大丈夫か?」
「え?」
目尻に浮かんだ涙を拭う。
「いや」
その様子を見ていたクマさんは、厳つい顔にさらに目力を加えた。そして、半分程残ったコーヒーがあるにも関わらず、グラスのお冷を飲み干し、氷を噛み砕いた。
「すみません。水を……ピッチャーごと借りれますか?」
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