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「うわぁ……」
職員室の扉を振り返る。
……頼れるみんなの本橋クンがセンセーとの約束を忘れるわけがないんだって。うんうん。
「……」
普段、アナタにも見せたことのない、彼の憂いを帯びた表情が気になり――
A.ゲームを優先する。
B.後を追う。
……A.を選択する。
選択肢を選んでいる間に、本橋クンの姿は保健室へと消えていた。
「……チッ」
はぁ、200Pもらえるなら行くしかないじゃん。
扉に張りつき、細心の注意を払いながら覗けるだけの隙間を作っていく。室内に確認できた人影は二人。保健医の今井先生と先程保健室へと入っていった本橋クンだ。
うわぁ、スカート超ミニ。白衣のほうが長いくらいじゃない?
かといって、あの足よりもっと自然体で綺麗な足を知っているだけに、そそられるものは何もないが。
耳を寄せ合い、立ち話をしていたため、内容は聞き取れなかった。
あれ、この匂い……つーか、近くない?
扉の隙間から覗いていることを引き算しても、二人は完全にパーソナルスペースを割っているように見えた。中の様子をさらに観察しようと目を細めると、今井先生の手が本橋クンの頬に添えられ……
「え……」
思わず声に出してしまい、俺は慌てて扉から身を隠した。脳裏に焼きついた光景に息を呑む。頬に添えられた手とは逆の手が本橋クンの制服のポケットにねじ込まれた次の瞬間、二人は荒々しく唇を重ねていた。
今、何をねじ込まれた? お札?
え、あれ? なに、これ。え……これって、もしかして、もしかしなくてもNTRバドエンってやつ……?
高速で瞬きを繰り返す。そろりと再び室内を覗くと、なだれ込むように二人の姿がカーテンの奥へと消えていくところだった。
おいおい、おい。
カーテンの奥の光景を無理矢理に想像させられ、嫌悪から全身が粟立つ。
『本当……俺に磯野はもったいないよ』
浮かない表情の理由は、これか。せめて鍵くらいかけろよ!
これはひどい……と思いながらも、鼻から笑みがこぼれる。気分は、まんまと一杯食わされた気分だ。次にすれ違った時、本橋クンの前で眞野を演じきれる自信ないなーと首を回していると、聞こえてきた足音に俺は後ろを振り返った。
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