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「――――ッ!」  思わずビクッと震えてしまった。が、私と目が合ったのは扉の横で額縁に入れて飾ってあった、写真の人物だ。  家族写真――だろうか。微笑を湛える両親に囲まれた少年が、無邪気に笑っている。  実に、微笑ましい写真だ。  しかしまあ、いくら無邪気とはいえ、この暗闇でいきなり目が合えば恐ろしく見えてくるのだが。 「……凝視は止めておくか」  そこそこの所でその写真から視線を逸らし、私はその部屋を後にした。  ギィッと音を立てて、扉を閉める。  その瞬間。  ドンドンと、何かを叩く音が、上階から聞こえてきた。 「……どうやら、本当のようだ」  何かを急かすかのように、その音は私の心を直接揺さぶる。来るなとも、来いとも、どちらとも言えないその強迫的なリズムが、不安を乱雑に煽る。  左手には出口である玄関がある。鍵が閉まっていて出れないというのが相場だが、そうなってしまえば窓でも何でも突き破ればいい。  いや、元よりそんな選択肢はいらない。 「……よし」  私は腹を決めて、その音の発信源へと近付くために――つまり、今日の本懐を遂げるために、歩き出した。  
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