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「…………」  驚きはない。恐怖しかない。  パニックには陥らない。悪寒は止まらない。  ドアノブを捻ると、その扉は、抵抗なく開いた。  臭い。とても。  確かに、貯蔵庫だったのか、年代物の木箱がたくさんある。  中身は、よく分からない。蝿や蛆のせいで。  壁紙の一部が剥がれている。  近寄って見てみると。 「……っ?」  スマホのライトを向けた瞬間、私の視界は、光に覆われた。  いや、刺されたと言うべきか。 「これは……?」  壁紙の裏にあったのは、銀色の、紙みたいなもの。  アルミホイル、だろうか。  どういうことだろう?  ……それにしても、やたら蒸した部屋だ。  窓が無いのが原因か。それとも、地面に溜まってる液体が原因か。  赤い、血のように赤い、液体。  ワインだろうか。  頭がボーッとして、よく分からない。  今はともかく、調査を続けよう。  何を探しているのかも分からないが、続けよう。  他に目ぼしいものは、特にない。  さっき挙げたもの以外は腐敗が酷く、白い骨すら覗かせる物まであった。  それに、ここに犬でも飼っていたのか知らないが、噛み痕のようなものが、肉塊のようなものにたくさん付いていた。  それが、不気味で。  私は、部屋の奥まで確認を終えた頃には、家に帰ることだけを考えていた。  そんな、私の脳内に。  ――バタン、と。  カチャリ、と。  そんな音が、響いた。  
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