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蒼い炯眼は容易く、魔の細流の塊を見て取った。
ユージーンは素早く術式を解除する。
再び接近してきた彫像を剣でいなしながら、彼は朗々と唱えた。
「“無辺の闇に遍く明滅する者達よ、千里の暗夜を拓く輝きを与えてくれたまえ!”」
南天の星々の図が剣の上方に浮き上がる。
その白光の眩さは、今までの比ではない。
雷光のように一瞬光が爆ぜ、純然たる光の力が剣身に纏われる。
馬の像の前肢が、ユージーンを踏み潰さんと持ち上げられる。
瞬間彼は屈みこみ、輝く剣を大きく薙ぎ払った。
地に着いた状態の後肢が一閃を浴びる。
二本の馬脚は容易く切り飛ばされ、前肢を上げた姿勢のまま鷲頭の馬身が後転した。
方や、離れた右方から、蒼い火焔流が押し寄せる。
ユージーンは剣を右体側に付けると、後方に飛び退く。
眼前を焔が過ぎ去ったのを見届けると、間髪入れず、獅子の元に助走を付けて身を躍らせる。
剣を高々と振り上げて。
「はあああああっ!」
裂帛の気合で繰り出された輝く剣撃は、あやまたず獅子の隆々とした上腕部に直撃した。
腕が落ちる。
同時に有翼像から青光が失せ、地に力なく転がった。
その勢いのまま、彼は後肢を失った鷲頭の馬像の元へ駆ける。
ユージーンは思い切り上方に腕を引くと、転がって前肢のみでもがく馬身に、突貫、剣を振り下ろす。
馬の胴に亀裂が生じ、光が飲み込まれ、背まで貫かれる。
その像もまた、見る見るうちにもただのひび割れた彫刻と化し、脚を動かす姿勢のまま動かなくなった。
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