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涼しげな水のせせらぎが、ミンミンジャワジャワと鳴き続ける蝉達の騒々しい大合唱に掻き消される中。
「クソ暑い…」
額を、頬を、背中を、体中を伝う熱い水の流れを感じながら忌々しげにそう呟き、眼下を流れる水のうねりに目をやる、俺は大きなため息を吐いた。
本当ならばこんな無防備に川辺へ腰掛け、無抵抗なまま陽射しに焼かれるなどごめんなのだが、あいつを待っている都合上ここを動く訳にはいかないのだ。
今、スマホで「待ち合わせ場所を変更する」と一言連絡すれば良いじゃないか、そう思った人も居るだろうがそうもいかない、何故ならあいつはアホだからだ、説明しても移動した先が分からないと言い出す、確実に。
「あぁ、さっさと戻ってこい…」
俺の小さな願いを乗せた独り言は蝉達の大合唱に飲まれて虚空へ消えていった、その様を眺めながらまた一つため息を吐いた。
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