前章 ギルドマスターの困惑

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 ──とある王都に、その王国の、街々のギルドと、それに登録している全ての冒険者達を直轄している『ロイヤルギルド』と呼ばれる組織の頂点に立つギルドがあった。  施設や業務の成績、依頼達成数、登録している冒険者の優秀さ等を評価基準とし、これを総合的に評価して、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランクと、三ツ星宿のように、それぞれギルドにはランク付けしており、この『ロイヤルギルド』は唯一のSランクギルドとして認定されている。  Sランクギルドである『ロイヤルギルド』は、先程言った評価基準が他の追随を許さないほどの充実化がされている。  施設は完備され、一位。  業務成績一位。  依頼達成数三位。  登録している冒険者や職員の実力一位。  このように、圧倒的な評価が、この『ロイヤルギルド』に付けられている。  それも、この評価は依頼達成数以外、ここ20年間変動したことは一度もなく、安定した成績を維持しているため、その安定性を買われ、ギルド名の通りに王室直属の公式ギルドとしての地位を築いている。  そう。正にこの『ロイヤルギルド』こそが、王国随一のギルドなのだ。  ──なのに 「──何故だ……」  ここはその『ロイヤルギルド』のギルドマスターの執務室。  一人の貫禄溢れる長く髭を伸ばした、中年の大男が座り、何かに悩んでいるのか、肘を立てて呻いていた。  眉間に皺を寄せ、細めたその青い双眸の先には、一枚の紙があった。  どうやら、この大男は、片手で持っている紙が原因で、悩んでいるらしい。     「どうして、どうしてなんだ……」  それはまるで心の底から訳が分からないような、いや、それよりも有り得ないという焦燥に満ちた顔だった。 「全ては完璧だった筈だ! ……業務はいつも通りに、抜け目なく毎日のようにこなし、依頼達成数だって、依頼達成後には様々な特典を付けることによって冒険者達の稼働率も上げて……それに主力であるAランクのパーティや冒険者が流出しないように、年間契約を交わし、将来有望な新人だって招き入れた筈っ……」  完全に焦りが生まれていた。  ここ20年間も抜かされていなかった依頼達成数の他の三つの評価が、まさか── 「──こんなちっぽけなギルドに抜かされるなんてッ!?」  
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