プロローグ 勇者とデュラハン

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プロローグ 勇者とデュラハン

 ──剣戟を繰り広げている音が、そこかしこの鈍重そうな壁に反響していた。  その戦場の名は、全ての戦いの根源でもあり、全ての終着点とも言える魔王の根城。  城の奥深くに存在する大きな部屋で、五人の勇敢な者達が今、魔王との戦いを前に、様々な魔族の大将達を相手取っている所だった。 「ク……」 「っ……」   激しさを増す、剣と剣の軌跡。  甲高い音が、これまでにないほどに響いていた。  勇者パーティーの筆頭、勇者・ユウト。  この男は今、魔王の側近である、重厚な鎧を魂の執念によって動かしているデュラハンという魔族と、一進一退の攻防を繰り広げていた。    両者とも、速すぎる剣戟の裏では  ──次にどこを攻撃し、どこを守るのか。  ──はたまたフェイントをかけ、裏を掻いては隙を作らせるか。  ──一旦距離を置いて、自分の剣が最大限に発揮できる間合いを計るのか。  という、高度な駆け引きが行われていた。  幸いにも、両者は剣を極めし者同士であるため、考えによって導き出される次の行動が同じ場合なため、切り傷はあろうとも、深傷は負ってはいない。 「フンッ!」 「はぁッ!!」    光速とも言える剣のぶつかり合いは、両者の渾身の袈裟斬りが相殺した時の鍔迫り合いによって、一旦中断される。  鍔迫り合いは力と力の勝負でもある。  しかし、勇者とデュラハンの力はほぼ互角のように見える。   「クッハハハハハハハハハハ……ナカナカノモノヲモッテイルナ。ユウシャ」  そこで、デュラハンは初めて勇者の力を認めたのか、戦いの最中だというのに愉快に笑ってくる。 「うるせぇ。さっさと死にやがれ」  一方、勇者・ユウトはデュラハンの問いかけに対し、睨みをきかせて、対照的な態度で接した。 「クック……スマナイガ、アイニクトモウシンデイルミデナ。ソノヨウボウニハコタエラレナイ。……ナンダ。ワタシガニクイカ?」 「いや憎いとは思っていない。ただ邪魔だと思っている」 「ホウ……コノワタシヲニククモッテイルワケデモナク、タダジャマダト。ソンナニモアイスルヒトノモトヘカエリタイノカ?」  
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