ファンタジーラボ

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 「それに触っちゃダメ!」  孝子は柳沢にそう言うが、既に遅かった。  ミミックの原寸大ミイラと概要が記載されていたその箱は口をカパッと開くと、柳沢に噛みついたのだ。  「それはミミックよ。ファンタジー世界では視界に入るものを学習して擬態する、モンスターの中では高度な知能を持った奴。擬態の性能はタコの皮膚によく似ているの、子供たちこのおじさん引っ張るわよ」  孝子は柳沢の脚を掴むと、治喜や孝美と一緒に引っ張る。 犬歯も臼歯もないので噛む力はダイレクトに体につたわり、乱暴に引き抜こうとすると体が真っ二つにされてしまうので、ゆっくり傷を作らないように。本来なら強力な消化液で噛んだ相手を液状に溶かして食していたのだろうか、水分を抜かれたミイラなので殺されずには済んだが。  「ファンタジー世界に、なんでこんなのがいるんだよ」  「生きたゴミ箱として製造された可能性もあるわね。ファンタジー世界にはゴミが全く出ないじゃない。ゴミ収集業者もなければ、どの町にもゴミ箱が一つもない本当の理由はこいつがいたからよ」  「1万5千年前のゴミ箱か。冗談じゃない」  「因みに体の構造は、映画のエイリアンとよく似てるわよ。強力な酸性の体液に溶けないように、アルカリ性の粘膜が保護している。外皮はタコみたく細かい模様や質感までコピーできるみたいね。信じる気になったかしら?」  「参ったよ、これだけされて信じない訳にはいかないな」
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