ファンタジーラボ

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 「子供たちのお待ちかね、呪文で動くダンジョンのコーナーに行きましょうか」  兼ねてより紹介すると言っていた、魔王のラストダンジョンのコーナーに柳沢たちを孝子は案内する。 そこには正方形のブロックを並べて作られた迷路のようなミニチュアが配置され、奥にはラボのような光景が広がっていた。  「すごい、スケルトンやゾンビまで配置されているけど、これどうやって動かすの?」  「これはな。正方形に番号が打ってあるだろ? 番号で名前を呼んで動けと命令するんだ坊や、てかれは教授の息子さん?」  白衣を着たラボの研究員は、孝子と治喜を見ながら訊ねる。  「こいつの子供。説明は私がしてる所なんだけど」  「良いじゃないですが、きみちょっとやってみなよ」  「7番、動けっ!」  治喜が7番の正方形に命じると、それはズルズルと横にスライドしてダンジョンに壁を作った。  「すごい、本当に動いた」  「魔王のラストダンジョンは魔王がモンスターを製造するためのラボだ。だから研究の邪魔をされないようにこうして勇者パーティーの侵入を防いだんだ」  「このダンジョンに引きこもって何を研究してたの? ここにいたら窒息しそうだけど」  「それは現在ルーン文字。君たちが学校から習った歴史的かな遣いから解読中だ。でも多くのモンスターはこの魔王が産み出しているんだよ」  「ファンタジー世界の時代からニートは存在していたの?」  「プロファイリングによるとだね。魔王は研究オタクでニート、サイコパスにソシオパスって人間らしい側面があった可能性が高い。これは魔王は元人間が非人間、魔族になったんじゃないかと言われている」  「難しくなって来たな......」  治喜は首を傾げた。  「魔王は本来は人間で、魔道士だった。学会ではDQNだったので爪弾きにされてダンジョンでニート生活を送りながら、人類に復讐するための研究を進めていた。そして辿り着いたのが人間をやめること、即ち"魔族になる"ことね」
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