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プロローグ
ここは魔大陸中央部、枯れた森と呼ばれる場所。
人間たちの間では、踏破するのにかかる時間は1ヶ月とも、1年とも、入ったら二度と出てこれないとも噂されている。また、その森は名前の通りこげ茶色の葉を付けた木々が生い茂っており、頭上には複雑に絡み合った木の枝と、その葉が月の光を遮り、暗闇を作り出している。
そんな森の中を一人の男が疾走していた。道などない森の中を、その男は縦横無尽に駆け回る。まるで木が男を避けているかのように木々の間を走り抜け、前方に崖が見えたかと思えば、10メートルほどのそれを飛び越えて対岸へと移うつる。
――やめろ、俺は行きたくないんだ――
男にはある目的があった。この森の中心部。そこに勇者として行くこと。
そして魔王に挑み、倒すと言う目的が。
それが、自分がこのまま死んでしまう前にどうしてもしておかなければならない事だったから。
それが、彼女と自分の現時点における差を埋める最後の機会だから。
だから彼は走る。彼女ならこの城の中心部にある魔王城を出て、その前の広場に待っていてくれるだろうと思いながら。
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