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年を取らない彼女は人間ではない何かなのだ。そしてあの日、生死の境をさまよっていた僕を明るいところに導いてくれた。
「何故、約束を十八歳にしたの? 長く時間が経ちすぎて、約束なんてすっかり忘れてしまっていたよ」
「それはね、子供か大人か、その境界線上に立っている時に、来てほしかったから。大人になるとね、私のような何かのことは自然と見えなくなるし、忘れていくものなんだよ」
彼女はそう言って笑った。
「さて、お話の時間もそろそろお終いだ。思い出してくれて、嬉しかったよ」
「思い出させてくれたのは君だろう? 毎日夢に現れて。そうじゃなかったら、僕は思い出せなかった」
すると、彼女はあのいたずらっぽい笑みを浮かべて言った。
「……覚えていてくれたらいいなって、この日をずっと楽しみにしてたんだ。無事に大きくなってて安心したよ」
そして、彼女はいたずらっぽさを引っ込めて優しく微笑むと、僕に向けて大きく手を振ってくれた。
「さよなら。元気でね」
僕も、彼女に手を振り返した。
そしてその瞬間、約束は果たされた。
「さよなら」
僕がそう言ったと同時に、彼女との距離は急速に離れて、視界は白い光に覆われていった。
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