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ふと気が付くと、僕は森の中に居た。
大きな木々に囲まれ、生い茂る木の葉が陽の光を遮り、あたりは暗い影に覆われている。
冷たい影の真ん中にまあるい陽だまりがあり、僕はじっとそこに立ち尽くしていた。周りから、じわじわと闇が迫ってくるような気がする。
恐怖に立ちすくんでいると、影の向こう側から突然、陽だまりに人が入ってきた。
いつも夢に出てくる少女だった。
「こんなところで、どうしたの? 迷子?」
白いワンピースを着た、裸足の少女がそう言って僕を見下ろす。
「あんた、人間だね。しかもまだ生きてるのに……こんなところに居ちゃいけないよ。おいで。明るいところへ案内してあげるから」
彼女はそう言って微笑むと、僕の手を引いて歩き出した。
薄暗い森の中を、彼女は迷いもせずにまっすぐに歩き続けた。
「普通は、なかなかこんな場所に迷い込むことなんてないんだけどね。まだ小さいからかな」
彼女はそう言いながら、ゆっくりと歩き続ける。
やがて、遠くに明るい光が見え、そこに近付いていくたびに暖かくなるのを感じる。
辿り着いた川辺は、見覚えのある美しいところだった。
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