川辺の約束

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川辺の約束

 緑の濃い、葉の生い茂る木々の間を通り抜け、美しい川辺に辿り着く。  陽の光を反射して煌めく川の水面から視線を動かし、繋いだ左手の先を見上げるとそれに気付いた少女はしゃがんで僕と目線を合わせてくれる。  白いノースリーブのワンピースを着た少女は、切り揃えられた黒い前髪の下、人懐こそうな大きな目を細めて笑った。  すらりと伸びた手足は透き通るように白く、少しウェーブのかかった黒髪が、肩から一房、流れ落ちている。  少女は、とても美しかった。  少女は繋いでいるのと逆の手で、僕の頭を撫でてくれた。そして、いたずらっぽい笑みを浮かべた唇が、何か言葉を形作っていく。  けれども、柔らかの吹く風の音も、滑らかに流れる水の音も聞こえる僕の耳に、少女の言葉は届かない。  やがて少女は何かを言い終え、繋いでいた手を離して小指を立て、僕に差し出す。  僕も右手の小指を立てて、少女の指にしっかりと絡ませた。  少女の白い手に比べて、僕の手はよく日に焼けていて小さかった。  指切りを終えると、彼女は立ち上がって小さく手を振り、また森の中へと戻っていく。その後ろ姿を見て、僕は彼女が裸足だったことに気付いた。  少女は振り返らない。  僕は彼女の背中を追いかけようと、森へ向けて一歩踏み出す。  すると、急に視界から彼女の背中は、森は遠のき、僕の意識は浮上していく。
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