指輪

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指輪

 Sさんは小学生の頃、少ない小遣いを必死に貯め、金属探知機を購入した。価格は1万円前後。空港の手荷物検査などで使用するには精度が足りないが、子供であるSさんにとっては十分に満足できる性能であり、1万円は大金だった。なぜそんなモノを買ったんだと家族に笑われたが、Sさんにとっては念願だったのである。    発端はテレビ番組だった。探検隊に扮したタレントが金属探知機を使って宝を探すシーンが頭から離れなかったのである。その時から必ず手に入れると誓い、コツコツとお金を貯めてきたのだった。  金属探知機を購入したものの、一向にそれで遊ぶ気配のないSさんのことを、家族は不思議そうに観察していたという。Sさんはそれを大事に扱い、春になるまで押入れの奥にしまっていた。まだ使うには早かったのだ。
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