第二話「ヘレンの場合」

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第二話「ヘレンの場合」

─私がここ、米国特務機関アーネンエルベに配属されたのは、米国…いえ、旧米国軍が機能しなくなってからだった。 国境など最早無いに等しい戦況下で、米国はその大半を失ってしまった。 残るは首都機能を守るためだけに作られたシェルターのみ。私はその中で、仮初の平穏に甘えていたのかもしれない。 「あら、今日も朝早くから研究?あなたは本当に熱心ね。」 白衣を着た彼は、私が軍に属していた頃からの知り合い、ルーカスだ。 「そういうヘレンだって、毎日欠かさずここに突っ立ってるじゃないか。よく飽きないな。」 「私の仕事はあなた達を守ること。何も起きないのが一番の成果だわ。」 「そうかい。僕は、こんな鳥籠に囚われたまま死んでいくのは御免だね。」 「そうやって皮肉ばかり言うのはあなたの悪い癖よ?もうちょっとポジティブになりましょう?」 ルーカスは頭を少しかいて、施設に入っていった。 ─鳥籠に囚われたまま…か。 その日の夕方、ルーカスは私を研究所に呼び出した。 「どうしたの?私に用があるなんて、珍しいじゃない。」 「これから、新たな実験を行うんだ。僕が目指す人類の救済とは少し違うけれど…。」 「…不安なのね。」     
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