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「これから君を、目の前のアイオーンに移植する。君はただ、眠っていればいい。そう、眠っていれば…。」
「ルーカス…。」
─あんな小さな子供を実験台にする事に、私も、そしてきっとルーカスも拒絶していた。
「私では駄目かしら。」
「どういう事だ?」
咄嗟に出た言葉だったが、それが私の本心だった。
「あの子の代わりに、私を使って欲しいの。」
「君がアイオーンに?そんな事…。」
「鳥籠に囚われたまま死んでいくのは御免だ、そう言ったのはあなたよ、ルーカス。私はその鳥籠を抜け出す一匹の鳥になれるなら、なんだってするわ。」
「ヘレン…。」
ルーカスは暫くの苦悩の後に、答えを出した。
「実験を一時中断。被験者をヘレンに変更する。」
私はその後、麻酔で眠らされた。
目が覚めたのは、冷たい鉄の塊の中だった。
「ヘレン…?」
「ルーカス…私は…。」
「安心してくれ、実験は成功だ。」
「そう…良かったわ…。」
「君はアイオーンとして生まれ変わった。もう命の心配をしなくてもいいんだ。」
「私は…。」
─私は、鳥籠を抜け出す一匹の鳥になれたのかしら…。
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