第一話「スピルの場合」

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第一話「スピルの場合」

「現時刻を以て、人類救済計画は凍結とする。」 ─最近のテレビはいつもこればかりだ。 沢山の大人達が怒鳴りあって、僕達はそれをこうして見ていることしかできないんだ。 「スピル、まだ起きていたのか。もう消灯時間は過ぎてるだろう。早く部屋に戻りなさい。」 ─施設の大人達も、こうして僕達孤児を受け入れてはいるけど、それもお金の為だって事くらい知ってる。 「ごめんなさい。なんだか眠れなくて。」 「そうか、夕方にも空爆があったばかりだからな。このシェルターの中にいる間は大丈夫だ。さあ、部屋に戻りなさい。」 ─仮眠室をあとにした僕は、施設の裏口に向かった。 裏口には水飲み場があるからだ。 一口水を飲んでから寝よう、そう思っただけだった。 「…あれ、裏口の鍵が開いてる?」 僕がそっと手を伸ばすと、自動ドアがあっさりと開いた。 ─ちょっとだけ、外の世界を見てもいいよね? 僕は暗い通路を、手すりを頼りに歩いていった。 しばらく歩くと、赤いランプがついている扉に辿り着いた。 もう引き返した方がいいかな、そう思った矢先だった。 「ナンバー011311、スピル・キューブリックを確認しました。」 「えっ!な、なに!?」 思わず僕は叫んでしまった。     
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