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私は怒りでハンドルを握っていた。
しかもわが子の命がけの行動に・・・
讃えようにも言葉にならない。出るのはため息ばかりだった。
「廉くんが20分休みジャングルジムから落ちてしまいまして、背中を打ったみたいで保健室で休んでます。今日は帰りたいと言ってまして、お迎えお願い出来ないでしょうか」
担任の竹村先生から携帯電話に連絡が入ったのはお昼前。
竹村先生は、この街で生まれ育った匠くん(主人)の同級生で親友でもある。3年前まではよく家にも遊びに来てくれていた。そして、仕事が忙しい匠くんに代わって廉のことを本当によく可愛がってくれていた。
そう、あの事故の前までは……
「なにか可笑しかった?」
竹村くんが言う。
「ごめんごめん。何か笑えるよね、その事務的な話し方」
私は笑いをこらえる。
「公私混同ならないように言ったんだよ」
「ごめんなさい」
私はそう言うとため息が自然にこぼれていた。
「どうしたの?」
竹村くんが心配そうに言った。
「廉、わざと落ちたのよ」
私は廉の勇気ある行動力がユウウツで仕方なかった。
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