高校にて

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 僕はそれから考え続けた。どうやってこの欲望を叶えようか。実際の問題として、このままでは殺人をすることになってしまう。日本においてそれは重罪であり、裁かれてしまう。それは嫌だ。とはいえ。  今を生きる黒崎結衣という人物そのものには興味がない。けれど、彼女のより深いところにこそ、その魂はあるはずだ。つまり僕が欲しいのは彼女の心筋や大脳皮質の神経細胞。殆どの細胞は、数日から数年単位で新しい細胞に入れ替わってしまう。すぐに入れ替わるような末端の細胞よりも、ずっと変わらない細胞を僕は取り入れたい。当然だ。それらは必ず食べなければならない。結局、彼女を取り入れること即ち殺人となる。  しばらく困っていた僕であったが、三ヶ月ほど前、ふと考えを改めた。逮捕されないに越したことはないが、もしこの欲望が叶えられるのならば、数十年の刑務所生活など苦ではないだろう。二つに分かれてしまった魂が一つになれば、現世のことなどどうでもよくなるに違いない。そもそも僕は未成年。そこまで刑罰は重くならないはずだ。僕の名前だって報道されないだろうし、大した問題ではないじゃないか。  そして僕は計画実行のチャンスを窺う為、黒崎結衣と仲良くなろうと考えた。もちろん仲良くなりたいと思ったわけではない。計画の為に、仲良くなっておいた方が都合がいいと考えたからだ。  そうして計画の為に彼女に話しかけようと考え始めてから三ヶ月が経ち、世界史の授業を受けている今に至る。  結局、今日まで一度も話しかけることができないままだった。話しかけようとすると、どうにも緊張してしまい、踏み止まってしまう。別にお近づきになりたいわけではない。ただ、必要なだけだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加