言葉と勇気

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ぎりぎりと手で穴を広げつつ、腕をつかんだ側の肘をねじ込む。障壁に沿って黒々とした筋が一本、二本と増えた。 空の巨大な魔方陣を抑えようとするアレクシアがぞっとしている。 「陛下!」 「もう少し、もう少し開けてくれると助かるなぁ、はは」 魔王は力を入れなおす。それでも直径を1センチ拡げたかどうかだ。 一方、モグラはクリスタリアに攻撃を防がれつつ、ほぼ肉弾戦を強いられていた。ジャックと婿殿のヒットアンドアウェイに苦戦している様子である。爪は砂をえぐり、牙が空を噛む。思ったより硬い毛皮のおかげで、ただの剣なら弾いてしまう。婿殿のルーン攻撃だけが、中にダメージを通していた。 「ジャック!もう少し気合い入れてくださらない?!」 「入れてるよ!クリスはもう少し下がってくれ!」 「何ですって?!」 「クリス!!」 攻撃を通すことはできなくても、防ぐことはできる。ジャックはクリスの前に立ちはだかり、振り下ろされた爪を刀身で受け止めた。そこへ婿殿の剣戟が入る。ダメージは浅いが、巨体のバランスを崩した。モグラは横転する。 「夫婦喧嘩は後にしてくれませんか」 「コミュニケーションだよ!」 婿殿の一言に、ジャックは返す。
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