上司と部下

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そもそも照明の働きとは何だろうか。この古い城の壁には松明が掲げられている。なのに、この暗さと言ったらどうだろう。夜と変わりないくらいの明るさしか提供しない。もっと仕事をすべきだろう。と、言っても松明は松明である。それに何の責任があるかと言えば、そんなものはないのである。松明がもし喋れたら、なんと言うだろう。 「とんだ言いがかりですよ」 松明の怒りを代弁したのだろうか。この暗く、無駄に広い部屋には人がいるようだ。うすぼんやりと輪郭となぞれば、ここはおおよその国がそういう造りをするであろう、謁見の間らしかった。高い天井から吊り下げられているのはその国の紋章を刺繍したタペストリー。これはまた自己主張の強い大きさだ。一、二段上がった壇上には権利を具現化するために華美な装飾のされた王座。座っている彼は、この暗闇に溶けるように真っ黒い服装をしていた。タペストリーほどの我はないのだろう。端々を美しい金糸で縁取ってはいるが、こう暗くちゃ意味もない。ひじ掛けに肘をついてけだるそうである。 しかし、先ほどの一言を言ったのは彼ではない。 彼の前には広間と壇上を区切る段差にどっかりと腰を下ろして、おそらく上司である玉座の彼に背を向けている人影があった。 「どうします?」 「お前はもっと宰相としての自覚を持ったほうがいいと思う」 首だけ振り返って問題を丸投げする彼に、上司である彼はあきれたように言った。
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