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「うーるーさーいー」
枕に顔を押し付けたままで言うので、声は籠っている。エイミは言うだけ言って気が済んだらしく、背中を向けるとすぐに寝息を立て始めた。モミジはそっと顔を上げる。隣には小さな背中が丸まっていた。
起こさないように顔を覗き込むと、彼はお気に入りのうさぎちゃんを抱いて眠っている。まだ4歳なのにどこか落ち着いていて、大人を怒らせるようなことは絶対にしない。モミジとは正反対だ。
モミジの心の中に、ちょっとしたいたずら心がむくむくと湧いてくる。彼女はそろりそろりとうさぎちゃんを彼から抜き取った。途中、起きかけたようだったが、何とか手に入った。
彼女はうさぎちゃんをわからないようにクッションカバーをかけてから、ベッドの下に隠した。一仕事終えた気分で自分も眠りに落ちていった。
「モミジ様、エイミ様、朝ですよー。ってどうされたんですか?」
「ぼ、ぼくのうさぎちゃ、いなぁのぉぉ」
二人を起こしにやってきたブロイが目にしたものは、シーツまではがされたベッドと、泣きすぎて顔中真っ赤になっているエイミだった。モミジはヘタレたクッションを抱いて椅子に座っている。
「エイミのオトモダチがいなくなっちゃったんだって。もうそれでずっとうるさかったんだから」
モミジはあくび交じりに状況を説明する。エイミは彼女の言葉を聞いて、再び大きな声で泣き始めてしまった。
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